同志社小学校

2012年 7月2日  京都市左京区にある同志社小学校を訪ね、奥野博行校長先生にお話しを伺って参りましたので、ご報告いたします。

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奥野 博行校長先生
(写真提供 同志社小学校)


奥野 博行校長先生のお話をご紹介します。
「公立小学校では校長が変われば方針が変わることもあります。しかし、私立学校ではそういうことは絶対にありません。私立学校は、綿々と受け継がれていく建学の精神と教育理念があります。それが、伝統です。

日本は、明治以降、産業・教育においても諸外国に追いつけ追い越せと国をあげて進んできました。勿論、その成果も出たと思います。しかし、1990年の終わ り頃からでしょうか、公立小学校の教育が計算の速さを競ったり、漢字をつめこむと言った画一性を求める教育に傾いていきましたが、「社会の教育力」が欠乏 していく中で、勉強ばかりを強調したために、子供にひずみが出てきました。そこで、文科省は、詰め込みではなく自分で考え表現し、余裕をもって自分の学び を創り出すことを狙って「ゆとり教育」に方向転換しました。ゆとり教育は、児童が主体的に学んでいき、数値では表わせない学力についてようやく目を向けた ものと捉えて、個人的には喜んでいたのですが、PISA型学力調査以降、ふたたび短絡的・直線的に教育を捉える風潮が強まったように思います。

そんな風潮の中、私は同志社小学校なら、「徳育の裏付けがあってこそはじめて知性が充然たる意味を持 つ」とする校祖新島の考えを引き継ぎ、知識の獲得や技能の練磨にのみ偏ることなく、その基礎となるべき豊かな感性・特性の陶冶に重きを置いた教育活動ができると信じ、同志社小学校の開校に参加しました。

学校と塾は違いますね。結果主義の塾と学校は違います。学校は、人を育むところです。同志社小学校は、しなやかで健やかな心、幅広い教養と英知を身に付けさせることができる学校です。」



CIMG4136同志社小学校 校門

同志社小学校のホームページはこちらをご覧ください。

奥 野博行先生は、同志社大学の卒業生で、同志社が小学校を創るのなら、真に同志社らしい小学校を創りたいと考えて入校されたそうです。そのあたりの詳細は、2006年5月23日 「火曜今出川チャペルアワー」の「奨励」記録に掲載されていますので、一部をご紹介いたします。
「素直に言うことを聞かないから悪い子なのではないし、一見素直に見えるからいい子なのでもない、子どもは子どもなりに歯を食いしばっ て精一杯生きているのだ、この思いは私に八田先生のあの、「生きよ、生かしめよ」の言葉を思い出させてくれたのです。そしてその言葉は、ただ単に八田先生 お一人から学んだということではなく、私にとっては、同志社での生活の中で身をもって学んだ言葉として心の中で生き続けてきました。さまざまに異なった考 え方、思想を持った先生方がしかし全体としては調和を保ちながら教えておられた大学、学問の場という枠組みを超えて大きな影響を与えられた多くの個性的な 友人たち・・・、互いの違いを認め合いながらも各々が自己の存在を主張しながら混在し、共存しあうのが同志社であり、「生きよ、生かしめよ」を体現する学 校・学園として心の中にずっとありました。

 ですから、私が勤める教育現場において、少しずつ伸びやかな実践、おおらかな人間性といったものを大切にする雰囲気が失われ、直線的 な学び、効率的な学習を追求するあまり、結果主義に陥り、本来最も大切にすべき「子ども同士の学び合い、鍛え合い」といったものがなおざりにされているこ とを感じる度に、「ああ、同志社に小学校があればなあ」と考えたものです。しかし、その時点では、それは全くの夢想に過ぎず、まさか、小学校設置に関わる ことができようなどとは、考えてもいませんでした。

 

~中略~

この四月、同志社小学校は第一歩を踏み出しました。

 今、全ての教員が子どもたちの心と正面から向きあうべく毎日を送っています。生きることの喜び、生かされることへの感謝、そのような 心をどのような場面でも忘れずに歩み続けることができれば、必ずや子どもたちに、しなやかで健やかな心、幅広い教養と英知を身に付けさせることができると 確信しています。「道草の教育」を標榜して歩み出した同志社小学校です。時代に迎合するのではなく、私たち教員一人ひとりが真摯に「生き」、そして、温かく「生かしめる」の精神を貫き続けた時、真に「人ひとりの大切さ」を実現することができるのだろうと思います。」

 

奥野博行校長先生の同志社小学校に寄せる思いが迫る文章ですね。

全文は「今出川火曜チャペルアワー」でご覧ください。



CIMG4133

同志社小学校 学舎

「奥野校長先生、同志社小学校が求める児童像を教えてください。」
「心 が満ち足りているお子さんの入学を望んでいます。愛情をいっぱい受けて育ち、心が満ち足りているお子さんは、失敗しても起き上がることができます。それ は、人との信頼関係を知っているからです。小学校受験塾に行って、叱られた経験が多く、結果だけが重要だと理解しているお子さんは、失敗した時の立ち直り が難しいことがありますね。受験教室に通っていらっしゃるお子さんも合格しますし、まったく行っておられずに家庭学習だけで合格されるお子様もあります よ。プリントの成績だけでなく、行動観察も同様に重要です。面接も含め総合的に判断して合否を出しています。基本的社会習慣が身についており、自然と親し み、年齢相応の体験を積んでいるお子さんのご入学を希望します。」


「奥野校長先生、面接の時に保護者に少し難しい質問が出る ように思うのですが。昨年ならば、「同じ女性としてお嬢様に特に気を付けてお声掛けしていることがありますか?」と言ったような、即答するには答えに詰ま るような質問が毎年出ているように思うのですが、どういった気持ちで用意している質問なのでしょうか?」
「面接時には、お子様に対しては生 活体験が豊かであるか、自然に触れているかと念頭におきながら質問をしています。この学校に来るまでに何を見ましたかなどを聞いたこともありましたね。子 どもたちは一生懸命考えて答えてくれます。保護者の方々も、突然の質問に戸惑うと思いますが、過度に緊張することなく、素直に答えていただければいいです よ。」


「奥野校長先生、志願表ですが、どんなところに気をつければ良いでしょうか?」
「志願表は、きちっと考え、きちっと書いていただきたいと思います。小さな字でぎっしり書くと言うよりは、きっちりと書くことを考えてください。」


「奥野校長先生、プリントは練習問題が付いていますか?」
「練習問題があるものもあり、無いものもあります。問題によって違います。」


「最後に、同志社小学校への受験を考えていらっしゃる保護者に、メッセージをお願いします。」
「私 立小学校受験の合否は、ご縁があるかないかだと思います。お子様の能力の高低ではないと思います。例えば、出題されたプリント問題にたまたま得意不得意が あるときもあるでしょうし、行動観察の時に、たまたまそのお子さんに目を向けた結果が良しと出る時もあると思います。どのお子さまにも目を向けようとたく さんの観察者でお子さんを見守りますが、そういうこともあるでしょう。だから、ご縁だなと思うのです。決して、お子様の能力の差ではありませんし、小学校 受験がすべてでもありません。
ですから、残念ながらご縁が無かった時は、お子様の前で辛い表情をするのは、控えていただきたいと思います。一番つ らいのは、お子さんですし、お父さまお母さまの辛い表情はお子さんにとってはとても悲しいことなのです。こんな小さなお子さんをそんな可哀想な目に会わせ たくないので、そこは気を付けていただきたいと思います。」


以上です。奥野博行校長先生、ありがとうございました。


学校HPの「学校に関するQ&A」の中の「同志社小学校の求める子ども像」もご紹介します。
「愛 情をいっぱいに受けて育たれたお子さまが最も望ましい、と考えています。それは、決して甘やかされて育ったという意味ではありません。甘やかされて育った お子さまは、我慢する力も弱く、自分勝手な面が見られますが、愛情をいっぱいに受けて育ったお子さまは、些細なことではくじけませんし、我慢することの大 切さも知っています。また、自分が人間として大切に育てられているので、他人も自分と同様に大切にする心を持っています。厳しくも優しく、愛情をたっぷり と受けて育った子どもらしい子ども、きらきらと瞳の輝いたお子さまのご入学をお待ちしています。」



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